ヨガの効果

慢性疲労症候群患者におけるアイソメトリック・ヨーガによる疲労、自律神経機能、血中バイオマーカーの変化

Changes in fatigue, autonomic functions, and blood biomarkers due to sitting isometric yoga in patients with chronic fatigue syndrome,BioPsychoSocial Medicine volume 12, Article number: 3 (2018) ,Takakazu Oka, Tokusei Tanahashi, Nobuyuki Sudo, Battuvshin Lkhagvasuren & Yu Yamada

1.はじめに

1.1 論文のテーマの紹介

この論文は、「慢性疲労症候群(CFS)患者における、座位で行うアイソメトリックヨガの一回のセッションが疲労軽減や自律神経機能、血液中のホルモンや炎症マーカーに与える効果を評価する」という内容でした。慢性疲労症候群は、長期間の疲労や自律神経の乱れ、免疫機能の異常が見られる疾患であり、日常生活や仕事に大きな支障をきたします。従来の治療法で改善が難しい場合もあり、新たなアプローチとしてのヨガの有効性が期待されています。

1.2 この研究の重要性

本研究は、アイソメトリックヨガがCFS患者に対し、短期間で疲労軽減や自律神経の改善、ストレスホルモンであるコルチゾールの低下、炎症性マーカーであるTNF-αの低下など、身体的・精神的な好影響を与える可能性を示しています。ヨガが短時間でこうした改善をもたらすことは、CFS患者が取り入れやすいセルフケア方法として有望です。特に、一般的なCFS治療において改善が見られなかった患者にも良い影響をもたらしたことは、さらなる研究や治療法の確立への一歩となると思われます。

2.論文の要点

2.1 研究の背景

慢性疲労症候群(CFS)は、6か月以上続く原因不明の疲労により、日常生活が著しく制限される病気です。過去の研究で、従来の治療に抵抗性のあるCFS患者に対して、座位で行うアイソメトリックヨガが疲労と痛みの軽減に効果があることが確認されました。

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本研究では、CFS患者におけるアイソメトリックヨガの短期的な疲労軽減効果が、どのようなメカニズムによるものかを解明するために、自律神経機能と血中バイオマーカーの変化を調査しました。

2.2 研究の方法

対象は、九州大学病院に通院する15人のCFS患者で、少なくとも6か月間の従来治療でも改善が見られなかった方々です。参加者は2か月間、座位のアイソメトリックヨガを週2回の指導セッションおよび自宅での練習を行いました。

実験当日、患者は病院で20分間のヨガを行い、前後に気分の評価や自律神経機能(心拍変動)、血液検査を実施しました。

ヨガの内容
  • 呼吸への意識:1分間、自然な呼吸を観察し、身体感覚を高める。
  • アイソメトリック姿勢:6つのポーズをゆっくり行い、体力の50%で緊張しながら呼気と共にポーズをキープ。
  • 腹式呼吸:1分間、呼吸がより規則的で深くなるのを観察。
測定項目
  • 疲労・活力:ヨガ前後での疲労感と活力をPOMS(Profile of Mood States)で評価。
  • 自律神経機能:心拍変動(HRV)を用い、副交感神経と交感神経の活動を分析。
  • 血中バイオマーカー:コルチゾール、DHEA-S、炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α、IFN-α)などを測定。

2.3 主な結果

自律神経系 (ANS):ヨガによりHRが低下し、心臓迷走神経の指標であるHF-HRVが増加しました。これは、CFS患者における自律神経の異常である交感神経の過活動と低迷走神経調整が改善された可能性を示唆しています。

HPA軸:ヨガ後にコルチゾールレベルが低下し、抗ストレスホルモンであるDHEA-Sレベルが増加しました。

免疫機能:血中TNF-αレベルが低下し、疲労感の軽減と関連が見られました。

中枢神経系 (CNS):ドーパミン代謝物HVAの増加が活力の向上と相関し、ドーパミン活性化がCFS患者の低エネルギー症状に有益である可能性が示されました。

カルニチン:本研究では、カルニチンレベルには影響が見られませんでした。

座位アイソメトリックヨガがCFS患者に対して短期的な疲労軽減と活力向上の効果を持つことが示されました。これらの変化が持続的にどの程度影響を及ぼすかは明らかではないため、今後の研究が必要です。また、ヨガの長期的な実践がCFS患者の全般的な健康改善に寄与する可能性があると考えられます。

研究の限界として、サンプルサイズの小ささやコントロール群の欠如などの限界を解決するため、さらなる研究が必要です。ヨガの長期的な影響や全患者への適用可能性を明らかにするため、追加の研究が望まれます。

3. 実生活でのアドバイス

CFSや慢性的な疲労に悩む方にとって、ヨガの一種である「座位でのアイソメトリックヨガ」は、以下のような点で日常生活に取り入れやすく、メリットがあります。

集中力の向上:ヨガの一回のセッションで活力が向上する可能性が示されており、仕事や家事への集中力を高めるためのサポートにもなります。

短時間で行える:この研究では20分間のヨガセッションが疲労軽減に効果を示したため、忙しい日常でも取り入れやすいです。しかもセッションの内容が、YoutubeでUPされています。

簡単な座位の姿勢で実施可能:体力に自信がなくても、椅子に座って行うことで負担を軽減しながら行えます。

ストレス軽減効果:コルチゾールの低下が確認されており、心身のリラックスやストレス軽減に役立ちます。日々のストレスケアにも適した方法です。

4. まとめと感想

本論文は、日本ヨーガ療法学会とも協力してヨーガの研究をしてくださっている、国際医療福祉大学の心療内科教授、岡孝和先生の論文です。CFSだけでなく、慢性的な疲労に悩む方やストレスを感じる方にとって、座位でのアイソメトリックヨガを日常に取り入れることは、体力や集中力、ストレス対策に役立つ方法として非常に有用ではないでしょうか。

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